理系的な戯れ

理工学系とくにロボットやドローンに関する計算・プログラミング等の話題を扱って、そのようなことに興味がある人たちのお役に立てればと思っております。

LR回路のスイッチング動作の計算

LR回路のスイッチング動作の計算のアイキャッチ画像

はじめに

僕は電気屋ではないので学校で本格的な電気の勉強をしたことは無いのですが 趣味でロボットを作りたくて勉強しています。そして、ロボット作って動いてくれるぐらいには 回路の事を理解できたかなと思っています。

むしろ、自分でロボット作るという事になると、かなりの割合で電気的なことも検討することになります。 じつは、恥ずかしながら、そのレベルでエレクトロニクスの授業をやったりしておりました。(もうしわけない)

今日の話題のきっかけは、つい最近Twitterでコイルに電流を流す計算式の手書きの メモの写真が掲載されてたことがありました。どなたか存じ上げず申し訳ないのですが、いつもだったらいいねとリツイートしそうなネタだったのですが その時は眠たかったのか、せずじまいで、先ほど探してみたのですが見つけられず残念でした。 それが気になって自分でLR回路の過渡応答を整理しておきたいとむずむずしていました。

しかも、LR回路の挙動についてはモータがLR回路そのものなので理解しておくとロボットの制御にものすごく役にたつと思うんです。 そこで、今日は正しいかは微妙にわからないんですが、長いこと自分で考えてきたことをお話ししようと思っております。

LRスイッチング回路

LRスイッチング回路の画像
LRスイッチング回路

上の図が今考えようとしている、LRスイッチング回路です。インダクタンスがLで抵抗がRです。 コイルには必ず抵抗成分Rがあるはずなので、上の回路図は実際の回路に置き換えたときにはコイル一個だけ存在している回路と思っています。

今回はスイッチをオンしたときに、この回路に流れる電流はどうなるのかコイルの両端の電圧はどうなるのかを考えていきたいと思います。

回路方程式を解いて過渡応答を求める

電源の電圧u、回路に流れる電流i、コイルの抵抗R、コイルのインダクタンスLとしますと電流に関する回路の方程式は次のようになります。

\displaystyle{
L\frac{di}{dt} + Ri = u
}

ここで初期値0で上式をラプラス変換してみましょう。

\displaystyle{
LsI + RI = \frac{u}{s}
}

Iについて解くと


\begin{eqnarray}
I &=& \frac{u}{s(Ls+R)}\\
&=& \frac{\frac{u}{L}}{s(s+\frac{R}{L})}
\end{eqnarray}

部分分数展開します。

\displaystyle{
I = \frac{K_1}{s} + \frac{K_2}{s+\frac{R}{L}}
}

係数を求めます。

\displaystyle{
K_1 = \lim_{s \to 0}  \frac{\frac{u}{L}}{s+\frac{R}{L}}=\frac{u}{R}
}
\displaystyle{
K_2 = \lim_{s \to -\frac{R}{L}}  \frac{\frac{u}{L}}{s}=-\frac{u}{R}
}

係数が求められましたので、電流の式に入れます。

\displaystyle{
I = \frac{u}{R}\frac{1}{s} -\frac{u}{R} \frac{1}{s+\frac{R}{L}}
}

逆ラプラス変換します。


\begin{eqnarray}
i(t) = \frac{u}{R}\ -\frac{u}{R} e^{-\frac{R}{L}t}
&=&\frac{u}{R} \left( 1 - e^{-\frac{R}{L}t} \right)
\end{eqnarray}

このように簡単な1次遅れの応答式が得られました。

電流の値の最終値は\frac{u}{R}になることが判りました。

以上のラプラス変換での導出は制御の基礎の基礎として以前 まとめてみましたのでそちらもご参照ください。

blog.rikei-tawamure.com

求められた応答から数値を当てはめてグラフを書いてみます。 数値は適当ですが抵抗は0.1Ω、インダクタンスは300μH、電源は5Vにしてみました。

LR回路をONにした際の応答のグラフ
LR回路のON応答

ここまで来たら、コイルの両端電圧を計算してから、スイッチをOFFにする話に突入するつもりだったんですが ふと思考が停止してしまいました。

想定している状況は下のように抵抗とインダクタンスがひと塊で実際のコイルだと思っています。 そうすると、コイルの両端にオシロスコープつなげても、出てくるのは電源電圧のフラットな波形ではないかと・・・・ 空想上の回路図ではコイルはインダクタンスと抵抗成分を直列接続しています。上記の計算もそれで行いました。 したがって空想上は抵抗の両端の電圧やインダクタンスの両端の電圧を計算して見せることはできます。 でも、実際にコイルに電源を接続する実験をしたら、測れるのは電源電圧です。

LR回路の測定の謎についての図解
LR回路の測定の謎

しばらく考え、回路の導線にあるわずかな抵抗か、電池の内部抵抗を考慮してみることにしました。電池の内部抵抗を考えた図を下に示します。

電池の内部抵抗を考慮した回路の図
電池の内部抵抗を考慮した回路

今回は先ほどの計算をそのまま使いたいので、電池の内部抵抗を0.01Ω、コイルの抵抗を0.09Ωとしてみました。

コイルの両端電圧は、電池の内部抵抗をrとすると電源電圧から内部抵抗での電圧降下分を引けばよいので、以下の式で計算できます。

\displaystyle{
v_c = u- r i(t)
}

これでグラフを描いてみました。

コイルの両端の電圧の過渡応答のグラフ
コイルの両端の電圧の過渡応答

ここまでで、理解したのは電流は1次遅れの応答をするので、電圧もそうなると言う変な先入観が、コイルの両端の電圧が電源と同じでフラットなわけがないという思い込みでした。 結果的にそれは正しいのだと考えていますが、内部抵抗が今回の計算よりもさらに小さい場合は、このように時間とともに降下する様子はわからないかもしれません。ですのでほぼフラットな波形が出るということもあるかと思います。 実験してみたいですね。(いつか追記したいと思います。)

スイッチをOFFにしてからの過渡応答

つづいてスイッチをOFFにした後の過渡応答を計算してみたいと思います。 回路の方程式を立てようとすると困ったことが判りました。 スイッチOFFは回路が閉じていないので方程式が立てられない・・・ どうしようかひたすら考えましたが、OFFにするとスイッチの接点同士が物理的に離れるわけです。 絶縁しているのですが、絶縁抵抗という言葉があるなあとふと思い、もの凄く大きな抵抗値の抵抗が接続しているとして 回路方程式を立ててみようと思いいたり、以下それを展開します。 以下の図は絶縁抵抗を加えたLR回路のとなります。

スイッチOFF時は絶縁抵抗があるとする回路図
スイッチOFF時は絶縁抵抗があるとする回路図

今回は電池の内部抵抗も含めて絶縁抵抗をR_sとして、残りの記号は、ON時のもとと同じにします。

OFF時の回路方程式は

\displaystyle{
L\frac{di}{dt} + (R_s + R)i = u
}

今回は、回路の初期状態は電流i_0が流れていますのでその時の電流はONの時の考察から以下になります。

\displaystyle{
i_0 = \frac{u}{R}
}

初期値を考慮して回路方程式をラプラス変換します。

\displaystyle{
L(sI-i_0) + (R_s + R)I = u
}

Iについて解くと

\displaystyle{
I=\frac{\frac{u}{L}}{s(s+\frac{R_s+R}{L})} + \frac{i_0}{s+\frac{R_s+R}{L}}
}

部分分数展開すると

\displaystyle{
I=\frac{u}{R_s+R}\frac{1}{s} - \frac{u}{R_s+R} \frac{1}{s+\frac{R_s+R}{L}} + \frac{i_0}{s+\frac{R_s+R}{L}}
}

逆ラプラス変換して整理すると

\displaystyle{
i(t)=\frac{u}{R_s+R}\left( 1- e^{-\frac{R_s+R}{L}t}\right) )+ i_0 e^{-\frac{R_s+R}{L}t}
}

初期電流50A、コイルの抵抗0.09Ω、絶縁抵抗100MΩ、インダクタンス300μHとして計算をすると 電流の過渡応答は以下のようになります。

OFF時の電流の過渡応答のグラフ
OFF時の電流の過渡応答

横軸のメモリに注目してほしいのですが。電流はOFF時は一瞬にして消滅する。回路を閉じているので当然と言えば当然ですね。

コイル間の電圧については、電源電圧から絶縁抵抗による降下分を引いた値となるので、以下の式で計算します。

\displaystyle{
v_c = u- R_s i(t)
}

計算した結果は次の図です。

OFF時の電圧の過渡応答のグラフ
OFF時の電圧の過渡応答

強烈な逆起電圧が発生しているのが判ります。

オンとオフの電圧波形を同じ時間軸に重ねて、連続して見えるようにしたグラフを次に示します。

LR回路のスイッチング過渡応答のグラフ
LR回路のスイッチング過渡応答

何が起こっているのか判りにくいかもしれませんが、スイッチオンでは電源電圧付近に電圧が落ち着いたあと、スイッチをオフすると長大な下ヒゲが伸びて、0Vに収束します。 LR回路でスイッチングをするとこのような過渡応答を繰り返すこととなるのだと思います。

おわりに

休暇の午後の時間に軽い気持ちで書き始めましたが、意外と時間がかかってしまいました。

ブラシモータもブラシレスモータもLR回路のスイッチングが関わっていますので、一度考察してみると面白いかと思います。 ルンゲクッタでの数値計算も併せてやってみたかったですが、今回は力尽きました。しかし、OFF時のひげの部分の応答速度は相当に早いかもしれないので 数値計算では工夫が必要かもしれません。

とりあえず、今回は久しぶりに二日続けてブログ更新できたので満足しています。